
日本のオノマトペ② 音を表す「ザーザー・ドンドン・リンリン」

今日のテーマ
前回(日本のオノマトペ①)では、「ワクワク」「ドキドキ」「キラキラ」など、気持ちや様子を音で表すことばを学びました。
今回は、もう1つの種類を取り上げます。
実際に耳に聞こえる音を、ことばにしたものです。
- 雨の「ザーザー」
- ドアをたたく「ドンドン」
- 電話が鳴る「リンリン」
これらは日本語で「擬音語(ぎおんご)」と言い、アニメ・マンガ・天気予報・日常会話に毎日のように出てきます。
今日は、日常生活でよく聞く音のオノマトペを8つ選んで、どんな音か・どう使うかを例といっしょに学びます。
擬音語と擬態語の違い(おさらい)
前回のおさらいとして、オノマトペの2種類を確認しておきましょう。
| 種類 | 表すもの | 例 |
|---|---|---|
| 擬音語(ぎおんご):音をことばにしたもの | 実さいに聞こえる音 | ザーザー(雨の音)、ドンドン(たたく音) |
| 擬態語(ぎたいご):様子をことばにしたもの | 様子・気持ち(音はない) | ワクワク(楽しみ)、キラキラ(光る感じ) |
擬音語は「実際に音が聞こえる」場面で使います。 擬態語は音がしない場面でも使えます。
今日のテーマは擬音語です。
今日おぼえる8つのことば
まずは一覧で見てみましょう。
| ことば | どんな音? | 一言で言うと |
|---|---|---|
| ザーザー | 強い雨の音 | 雨がたくさん降っている |
| ドンドン | 重いものをたたく音 | ドアや床をこぶしでたたく |
| リンリン | 小さなベルの音 | 電話や自転車のベル |
| コンコン | 軽いノックの音・咳の音 | ドアを指でたたく、または咳をする |
| ガタガタ | ものが揺れてぶつかる音 | 電車・窓・机など |
| パチパチ | 小さなものがはじける音 | 拍手・火が燃える音 |
| ブーブー | 低くにぶい音・不満の声 | 車のクラクション、不満の声 |
| ゴロゴロ | 重いものが転がる・鳴る音 | 雷の音、猫ののどの音 |
それぞれ、もう少し詳しく見ていきます。
① ザーザー
意味: 強い雨が降るときの音。水がたくさん流れる音にも使います。
「小雨」には使いません。強くてたくさん降る雨のときに使います。
例文:
- 外はザーザー降りで、傘を忘れた。
- 雨がザーザー降っているので、外に出たくない。
- シャワーをザーザー出しっぱなしにしないで。
使い方のヒント: 「ザーザー降り」という言い方もあります。「大雨だ」より生き生きした表現です。
② ドンドン
意味: 重いものを強くたたく音。繰り返し続く音です。
ドアをたたくとき、または速いペースで何かが進むときにも使います。
例文:
- 誰かがドアをドンドンたたいている。
- 子どもたちが床をドンドン走っている。
- 仕事がドンドン増えてきた。(進む・増えるの意味でも使える)
「コンコン」との違い: 「ドンドン」は強くて重い音、「コンコン」は軽くて静かな音です。場面で使い分けましょう。
③ リンリン
意味: 小さくてきれいなベルの音。電話・自転車のベル・虫の声にも使います。
高くて軽い音のイメージです。
例文:
- 電話がリンリン鳴っている。
- 秋になると、虫がリンリン鳴く。
- 自転車のベルをリンリン鳴らして通った。
使い方のヒント: 最近はスマートフォンの着信音が増えたため、実際の会話より文章(小説・詩)でよく見ます。
④ コンコン
意味: 軽くドアをたたく音。または咳をする音。
1つのことばで2つの意味があります。文の流れで意味を判断しましょう。
例文:
- ドアをコンコンとたたいて、入ってもいいか聞いた。(ノック)
- 彼は朝からずっとコンコン咳をしている。(咳)
- コンコンとノックをしたが、返事がなかった。(ノック)
注意: 「コンコン」の咳は、軽い咳をイメージします。激しい咳には「ゴホゴホ」を使います。
⑤ ガタガタ
意味: 固いものが揺れてぶつかり合う音。または、体が震える様子。
電車・窓・机・体の震えなど、揺れにまつわる場面でよく使います。
例文:
- 電車の中で、窓がガタガタ音を立てていた。
- 古い机の足がガタガタで、揺れる。
- 寒くて体がガタガタ震えた。
使い方のヒント: 「ガタガタ言う」という表現もあり、「文句を言う」という意味になります(口語)。
⑥ パチパチ
意味: 小さくて軽いものがはじける・ぶつかる音。
拍手・火・静電気など、いくつかの場面で使います。
例文:
- 発表が終わると、みんながパチパチ拍手した。
- キャンプファイヤーの火がパチパチ燃えていた。
- 火が燃えて、パチパチと音がした。
使い方のヒント: 拍手のパチパチは、少し軽い・かわいい印象の音です。大きな拍手は「わー」や「バチバチ」(くだけた表現)で伝えることもあります。
⑦ ブーブー
意味: 低くにぶい音。または、子どもが不満を言う様子。
2つの意味があります。
例文:
- 車がブーブー(クラクションを)鳴らした。(車の音)
- 宿題が多くて、子どもたちがブーブー言っていた。(不満の声)
- ハチがブーブー飛んでいた。(羽の音)
注意: 「ブーブー言う」は子どもっぽい表現に聞こえることがあります。大人の会話では「文句を言う」「不満を言う」の方がていねいです。
⑧ ゴロゴロ
意味: 重いものがゆっくり転がる音・遠くから聞こえる大きな音。
雷・猫ののどの音・転がるものなど、いくつかの場面で使います。
例文:
- 遠くで雷がゴロゴロ鳴っている。(雷)
- 猫が気持ちよさそうにゴロゴロしている。(のどを鳴らす)
- 重い荷物をゴロゴロ引いて歩いた。(キャリーケースの音)
使い方のヒント: 「家でゴロゴロしている」という表現は「ごろごろ=ゆっくり寝転がっている」という意味でよく使います(擬態語の使い方)。
音のオノマトペの作り方(基本のパターン)
| 形 | 例 | 説明 |
|---|---|---|
| 同じ音を2回くりかえす | ザーザー、ドンドン、ゴロゴロ | いちばん多い形。音が続く感じが出る。 |
| 「〜と」をつけて副詞にする | コンコンとたたく、パチパチと音がした | 動作を説明するときに自然。 |
| 「〜する」をつけて動詞にする | ガタガタする、ゴロゴロする | 状態・様子を表す。 |
| 「〜音(おと)がする」の形にする | ドンドン音がする、ガタガタ音がした | 音が聞こえることをていねいに表す。 |
使われる場面①:天気・自然の音
日本では季節や天気の変化が大きく、オノマトペで表現することがよくあります。
- 梅雨の時期、雨がザーザー降ります。
- 夏の夜、遠くで雷がゴロゴロ鳴っていた。
- 台風で、窓がガタガタ揺れた。
自然の音はニュース・天気予報・会話でよく出てくるので、覚えておくと便利です。
使われる場面②:人や物の音
人の動作、家具、乗り物など、毎日の生活でもよく聞く音です。
- 隣の部屋から、ドンドンたたく音がした。
- 電車の中で赤ちゃんがゴロゴロのおもちゃで遊んでいた。
- 会議室のドアをコンコンたたいて入った。
注意点:似た音・まちがえやすい組み合わせ
| 音 | 場面 | 混同しやすい音 | 違い |
|---|---|---|---|
| ザーザー | 強い雨 | シトシト | シトシトは小雨・静かな雨 |
| ドンドン | 強くたたく | コンコン | コンコンは軽くたたく |
| コンコン | 軽い咳 | ゴホゴホ | ゴホゴホは激しい咳 |
| パチパチ | 拍手・火 | バチバチ | バチバチはより激しい感じ(くだけた表現) |
| ゴロゴロ | 雷・猫・転がる | ゴトゴト | ゴトゴトは列車・鍋の音 |
「擬音語」が向いている場面・向かない場面
| 向いている場面 | 向かない場面 |
|---|---|
| 友だちとの会話で状況を生き生き伝えるとき | 公的な文書・報告書(多用は避ける) |
| SNS・日記で場面の音を表したいとき | ビジネスメール(やや幼い印象になることも) |
| 子どもへの説明・読み聞かせ | 学術論文・法律文書 |
| アニメ・マンガ・小説の描写 | 初対面の改まった自己紹介 |
言い換えの方向性(かな(ひらがなよみ)+ IPA)
| ことば | どんな音? | 例文 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | 使い方のポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| ザーザー | 強い雨 | 雨がザーザー降っている。 | ざーざー | [zaːzaː] | 強くたくさん降る雨のみ |
| ドンドン | 重くたたく音 | ドアをドンドンたたいた。 | どんどん | [do̞ɴdo̞ɴ] | 強くて重い繰り返しの音 |
| リンリン | ベルの音 | 電話がリンリン鳴っている。 | りんりん | [ɾiɴɾiɴ] | 軽くてきれいな金属音 |
| コンコン | 軽いノック・咳 | ドアをコンコンたたいた。 | こんこん | [ko̞ŋko̞ŋ] | 軽くて静かな音 |
| ガタガタ | 揺れてぶつかる音 | 電車の窓がガタガタした。 | がたがた | [ɡataɡata] | 固いものが揺れる感じ |
| パチパチ | はじける・拍手 | みんながパチパチ拍手した。 | ぱちぱち | [patɕipatɕi] | 小さくて軽いはじける音 |
| ブーブー | 低い音・不満 | 車がブーブー鳴らした。 | ぶーぶー | [buːbuː] | 低くてにぶい繰り返しの音 |
| ゴロゴロ | 重いものが転がる・雷 | 雷がゴロゴロ鳴っている。 | ごろごろ | [ɡo̞ɾo̞ɡo̞ɾo̞] | ゆっくり重く動く感じ |
IPA は近似です。母音の長さや鼻音(「ン」)の位置は話し手や地域によって変わります。かなと合わせて確認してください。
実際の使い分け例(生活と仕事|かな(ひらがなよみ)+ IPA)
| シーン | 言いたい意図 | 適切な言い方 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 生活(天気) | 雨が強い | 外、ザーザー降りだよ。 | そと ざーざー ふり だよ | [so̞to̞ zaːzaː ɸɯɾi da jo̞] | 天気の強さを生き生きと伝える |
| 生活(家) | 窓が揺れている | 台風で窓がガタガタしてる。 | たいふう で まど が がたがた してる | [taiɸɯː de̞ mado̞ ɡa ɡataɡata ɕite̞ɾɯ] | 状況をすぐに伝えられる |
| 生活(ペット) | 猫が落ち着いている | うちの猫、ゴロゴロ言ってる。 | うち の ねこ ごろごろ いってる | [ɯ̥tɕi no̞ ne̞ko̞ ɡo̞ɾo̞ɡo̞ɾo̞ itte̞ɾɯ] | 猫のご機嫌がよい様子 |
| 学校(授業) | 発表が終わった | 発表の後、パチパチ拍手してもらった。 | はっぴょう の あと ぱちぱち はくしゅ してもらった | [happʲo̞ː no̞ ato̞ patɕipatɕi hakɯɕɯ ɕite̞mo̞ɾatta] | 拍手の音で場面が浮かぶ |
| 学校(体調) | 友だちが咳をしている | 隣の子がコンコン咳してた。 | となり の こ が こんこん せき してた | [to̞naɾi no̞ ko̞ ɡa ko̞ŋko̞ŋ se̞ki ɕite̞ta] | 軽い咳の様子を伝える |
| 仕事(訪問) | 会議室に入る前 | ドアをコンコンとたたいて入りました。 | どあ を こんこん と たたいて はいりました | [do̞a o̞ ko̞ŋko̞ŋ to̞ tataide̞ haiɾimasɯ] | ていねいなノックの描写 |
小さなコツ:もっと自然に使う
1) 「〜と」をつけると、ひとつの動作に聞こえる
「コンコンたたく」と「コンコンとたたく」は同じ意味ですが、 「コンコンとたたく」は少し書き言葉らしく、ていねいに聞こえます。
- 会話:ドアをコンコンたたいた。
- 文章:ドアをコンコンとたたいた。
2) 音の大きさで使い分ける
音のオノマトペは、音の大きさ・強さによって使い分けます。
| 強い | 弱い |
|---|---|
| ドンドン(強くたたく) | コンコン(軽くたたく) |
| ザーザー(強い雨) | シトシト(小雨) |
| ゴホゴホ(激しい咳) | コンコン(軽い咳) |
場面に合った音を使うと、より正確に状況が伝わります。
3) 同じことばでも意味が変わることがある
「ゴロゴロ」や「ブーブー」は、場面によって意味が変わります。
- ゴロゴロ:雷の音、猫、転がる、家でぼーっとしている
- ブーブー:車のクラクション、羽の音、不満を言う声
どの意味かは、文の流れから判断しましょう。
よくあるミスと直し方
| よくある文 | 何が困る? | 直し方(例) |
|---|---|---|
| 小雨がザーザー降っている。 | ザーザーは強い雨。小雨には合わない | 小雨がシトシト降っている。 |
| ドアをゴロゴロたたいた。 | ゴロゴロはたたく音ではなく転がる・雷の音 | ドアをドンドンたたいた。 |
| 猫がパチパチしている。 | パチパチは拍手・火の音。猫のどの音ではない | 猫がゴロゴロしている。 |
| 電話をリンリン使った。 | リンリンは鳴る音。「使った」には合わない | 電話がリンリン鳴った。 |
まとめ
音を表すオノマトペは、
- 雨・水の音:ザーザー(強い雨)
- たたく音:ドンドン(強く)、コンコン(軽く)
- ベル・電話の音:リンリン
- 揺れる音:ガタガタ
- はじける音・拍手:パチパチ
- 低くにぶい音・不満:ブーブー
- 重くゆっくりした音・雷・猫:ゴロゴロ
のように、音の種類でグループにして覚えると整理しやすくなります。
ポイントは、
- 同じ音を2回くりかえす形が多い
- 「〜と」をつけると副詞、「〜する」をつけると動詞になる
- 1つのことばで複数の場面に使えるものもある(コンコン・ゴロゴロ)
- 音の大きさ・強さで使い分けるものがある(ドンドン vs コンコン)
の4つです。
音のオノマトペが使えるようになると、日本語で場面の音を、そのまま伝えることができます。 今日学んだ8つから、まずよく聞く音(雨・ノック)のことばを実際に使ってみましょう。
次回予告
次回(日本のオノマトペ③)では、感触・触り心地を表すオノマトペを取り上げます。 「フワフワ(やわらかい)」「ツルツル(なめらか)」「ゴワゴワ(かたい)」など、 手で触ったときの感じを音で表すおもしろさを見ていきます。 お楽しみに。
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