
あいまい表現③ 「〜ではないでしょうか」はどう使うか

今日のテーマ
「〜ではないでしょうか」は、相手に配慮しながら意見を出す表現です。
言い切らないので、やわらかい提案に聞こえます。
一方で、使い方をまちがえると、
- 回りくどい
- 自信がない
- はっきり言わない
という印象になることもあります。
今日は、使う場面と言い換えをセットで学びます。
「〜ではないでしょうか」は提案と同意をやわらかく示す表現
「〜ではないでしょうか」は、
- 自分の考えを一方的に押しつけない
- 相手の意見を入れる余地を作る
- 会話を続けやすくする
という働きがあります。
会議、学校の話し合い、友だちとの相談などでよく使います。
「あなたはどう思いますか」という気持ちを、文の中に自然に入れられます。
| 言い方 | 相手に伝わる感じ |
|---|---|
| 〜です。 | はっきりした判断。決定に近い。 |
| 〜と思います。 | 話し手の意見を出す。 |
| 〜ではないでしょうか。 | 提案しながら相手の同意を求める。 |
「〜と思います」との違い
次の2つは意味が近いですが、中心がちがいます。
この方法がよいと思います。
この方法がよいのではないでしょうか。
- 「〜と思います」 → 話し手の意見が中心
- 「〜ではないでしょうか」 → 相手との合意が中心
「〜ではないでしょうか」は、相手に考える時間をわたす表現です。
そのため、相談の場ではとても便利です。
文の形と作り方
「〜ではないでしょうか」は、名詞文・形容詞文・動詞文で作れます。
基本は「普通の文」から「ではないでしょうか」をつける形です。
| 文のタイプ | 形 | 例 |
|---|---|---|
| 名詞 | 名詞+ではないでしょうか | この案が最善ではないでしょうか。 |
| い形容詞 | い形+のではないでしょうか | この説明は長いのではないでしょうか。 |
| な形容詞 | な形+なのではないでしょうか | この手順は安全なのではないでしょうか。 |
| 動詞 | 普通形+のではないでしょうか | 先に確認したほうがよいのではないでしょうか。 |
「の」を入れると、文が自然になります。
話しことばでは「〜んじゃないですか」に近い形もありますが、この記事ではていねいな形を使います。
使われる場面①:提案をやわらかく出したいとき
会議や相談で、相手の顔を立てたいときに使います。
- この案で進めましょう。
→ この案で進めるのがよいのではないでしょうか。
後の言い方は、
- 相手が「はい」も「別の意見」も言いやすい
- 話し合いが止まりにくい
- 強い命令に聞こえない
という利点があります。
使われる場面②:相手の考えを引き出したいとき
確認やすり合わせでも使えます。
- 問題があります。
→ 問題があるのではないでしょうか。
「あります」と言い切ると、反論しにくい空気になることがあります。
「〜ではないでしょうか」を使うと、相手が根拠を出しやすくなります。
たとえば:
- この数字は少し高いのではないでしょうか。
- この予定は少しきびしいのではないでしょうか。
どちらも、相手に考えてもらう入口になります。
注意点:「〜ではないでしょうか」は回りくどくなることがある
便利な表現ですが、毎文で使うと逆効果です。
- 決めるべき場面で決めていない
- 責任を取りたくないように見える
- 話が前に進みにくい
という印象につながるからです。
特に、
- 最終判断を伝える場面
- 指示を出す立場
- 時間が少ない場面
では、はっきりした文を選びましょう。
「〜ではないでしょうか」が向いている場面・向かない場面
| 向いている場面 | 向かない場面 |
|---|---|
| 提案を出すとき | 最終決定を伝えるとき |
| 意見交換の初め | 明確な指示が必要なとき |
| 相手の考えを聞きたいとき | すぐに行動が必要なとき |
| 合意形成の初期段階 | 責任の所在を明確にする場面 |
場面に合わせて、やわらかい文と断定文を使い分けることが大切です。
言い換えの方向性(かな(ひらがなよみ)+ IPA)
目的に合わせて、文の強さを調整します。
| 言い換えの型 | 目的 | 例文 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | 機能の説明 |
|---|---|---|---|---|---|
| 同意を求める提案 | やわらかく提案する | この案がよいのではないでしょうか。 | この あん が よい の では ない でしょうか | [ko̞no̞ aɴ ɡa̠ jo̞i no̞ de̞wa nai de̞ɕoːka] | 返答の余地を残す |
| 自分の意見を出す | 話し手の立場を示す | 私はこの案がよいと思います。 | わたし は この あん が よい と おもいます | [wataɕi wa ko̞no̞ aɴ ɡa̠ jo̞i to̞ o̞mo̞imasɯ] | だれの意見か明確になる |
| 問題提起をやわらかくする | 対立を避けて確認する | この点は問題があるのではないでしょうか。 | この てん は もんだい が ある の では ない でしょうか | [ko̞no̞ te̞ɴ wa mo̞ɴdai ɡa̠ aɾɯ no̞ de̞wa nai de̞ɕoːka] | 反論しやすい空気を作る |
| 事実をはっきり言う | 決定や判断を伝える | この点は問題があります。 | この てん は もんだい が あります | [ko̞no̞ te̞ɴ wa mo̞ɴdai ɡa̠ aɾimasɯ] | すぐ行動したい場面に向く |
| 別の丁寧提案にする | 相手参加をうながす | まずA案から試すのはどうでしょうか。 | まず えーあん から ためす の は どう でしょうか | [mazɯ eːaɴ kaɾa tame̞sɯ no̞ wa doː de̞ɕoːka] | 一緒に考える形になる |
| 決定を伝える | 結論を明確にする | 今日はこの案で進めます。 | きょう は この あん で すすめます | [kʲo̞ː wa ko̞no̞ aɴ de sɯsɯmemasɯ] | 話を前に進められる |
IPA は近似です。母音の長さと「ん」の音は話し手で少し変わります。かなと合わせて確認してください。
実際の使い分け例(生活と仕事|かな(ひらがなよみ)+ IPA)
同じ内容でも、場面に合わせて文を変えると伝わり方がよくなります。
| シーン | 言いたい意図 | 適切な言い方 | 読み(かな(ひらがなよみ)) | 発音(IPA) | ポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 生活(家族の相談) | 提案をやわらかく出す | 明日は朝に出るほうがよいのではないでしょうか。 | あした は あさ に でる ほう が よい の では ない でしょうか | [aɕita wa asa ni de̞ɾɯ hoː ɡa̠ jo̞i no̞ de̞wa nai de̞ɕoːka] | 反対意見も出しやすい |
| 学校(グループ発表) | 相手の同意を確認する | この順番で説明するのがよいのではないでしょうか。 | この じゅんばん で せつめい する の が よい の では ない でしょうか | [ko̞no̞ dʑɯmba̠ɴ de̞ se̞tsɯme̞ː sɯɾɯ no̞ ɡa̠ jo̞i no̞ de̞wa nai de̞ɕoːka] | 合意形成の入口になる |
| 仕事(会議) | 問題提起をする | この予定は少しきびしいのではないでしょうか。 | この よてい は すこし きびしい の では ない でしょうか | [ko̞no̞ jo̞te̞ː wa sɯko̞ɕi kʲibiɕiː no̞ de̞wa nai de̞ɕoːka] | 対立をやわらげる |
| 仕事(最終決定) | 結論をはっきり伝える | 今日はこの案で進めます。 | きょう は この あん で すすめます | [kʲo̞ː wa ko̞no̞ aɴ de sɯsɯmemasɯ] | 決定の文に切り替える |
| 生活(友だちとの予定) | 提案と確認を同時にする | 先にチケットを買うのがよいのではないでしょうか。 | さき に ちけっと を かう の が よい の では ない でしょうか | [sakʲi ni tɕike̞tːo o̞ kaɯ no̞ ɡa̠ jo̞i no̞ de̞wa nai de̞ɕoːka] | やわらかく行動をうながす |
| 仕事(指示) | 行動を明確にする | 先に資料を送ってください。 | さき に しりょう を おくって ください | [sakʲi ni ɕiɾʲoː o̞ o̞kɯtːe̞ kɯda̠sai] | すぐ動いてほしいときに向く |
小さなコツ:伝わりやすくする
1) 1文ごとに目的を決める
その文で何をしたいかを先に決めると、形を選びやすいです。
- 提案したい → 「〜ではないでしょうか」
- 意見を言いたい → 「〜と思います」
- 決定を伝えたい → 「〜です/〜します」
2) 理由を短く足す
理由を1つ入れると、相手が判断しやすくなります。
- この案がよいのではないでしょうか。
- 時間を節約できるので、この案がよいのではないでしょうか。
3) 会話の終わりでは断定文にする
ずっと提案形で話すと結論が見えません。
最後は決定文でしめると、次の行動が明確になります。
よくあるミスと直し方
| よくある文 | 何が困る? | 直し方(例) |
|---|---|---|
| この案で進めるのではないでしょうかでしょうか。 | 「でしょうか」が重なる | この案で進めるのではないでしょうか。 |
| 今日は中止ではないでしょうか。 | 決定場面では弱い | 今日は中止です。 |
| 何でも「〜ではないでしょうか」で言う | 結論が見えにくい | 提案は「〜ではないでしょうか」、決定は「〜です」に分ける |
まとめ
「〜ではないでしょうか」は、
- 提案をやわらかく伝える
- 相手の同意を求める
- 会話を続けやすくする
ための便利な表現です。
一方で、使いすぎると、
- 回りくどい
- 決めない
- 責任が見えにくい
という印象になります。
場面に合わせて、
- 提案の文(〜ではないでしょうか)
- 意見の文(〜と思います)
- 決定の文(〜です/〜します)
を使い分けましょう。
おまけ

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