<- Back to blog

ことばを言い換えよう⑥「すごい」を正確に伝える言葉を探す

Kotoba Drill スタッフ

今日のテーマ

「すごい」は、会話のあらゆる場面で使われる便利な言葉です。
「すごい人」「すごくおいしい」「すごいですね!」など、驚き・感動・評価など、多くの意味を持ちます。

しかし便利すぎるために、何がどのように“すごい”のかが伝わりにくくなるという問題もあります。
今回は、「すごい」を文の機能ごとに整理し、目的に合わせた言い換え方を考えます。
学習を始めたばかりの人でも使いやすいように、短くて明るい文を中心にまとめます。


なぜ「あいまい」なのか

「すごい」は本来、「恐ろしい・程度が大きい」という意味の形容詞でした。
現代ではポジティブな意味で使われることが多いですが、文脈によっては肯定・否定・驚き・感情の強調など複数の機能を持ちます。

用法意味伝わり方のポイント
程度の強調とても〜だすごく寒いです温度の強さだけを伝えている
評価優れているすごい技術ですね相手をほめたいときに使う
驚き・感動予想外で感心すごい!できたんですか?感情が主役になっている
否定的評価程度が過剰で問題すごい音がする(=うるさい)不快さや困りごとを示す

このように、同じ「すごい」でも、使われる場面によって機能がまったく異なるのです。
言い換えるときは「何が」「どのくらい」「どんな気持ちで」伝えたいのかを先に決めると、表現がはっきりします。


言い換えの方向性(読み・IPA つき)

「すごい」は、その場で表したい感情や評価の種類を明確にすると、より自然な日本語に言い換えられます。ここでは読み(かな)と IPA をそえて、声に出しやすい形にまとめました。

言い換えの型意図例文よみ(かな)発音(IPA)機能の説明
評価を伝える相手や物事を高く評価する素晴らしい成果です。すばらしい せいか です[sɯ̥.ba.ɾa.ɕiː seː.ka desɯ]能力や努力を、落ち着いたトーンでほめる
感動を伝える驚きや尊敬を表す本当に感動しました。ほんとうに かんどうしました[hoɴ.toː.ni kaɴ.doː.ɕi.ma.ɕi.ta]心が動いたことを、そのまま伝える
程度を示す強さ・多さを表すとても静かです。とても しずか です[to.te.mo ɕi.zö.ka desɯ]「すごく」の代わりに使う副詞で、状況を具体化
意外性を伝える予想外の結果を強調思った以上に早いですね。おもった いじょうに はやい ですね[o.moʔ.ta i.ʑoː.ni ha.jai de.sɯ.ne]予想との差を示し、驚きを丁寧に表す
否定的意味を明確化強すぎる・大きすぎるなど音がとても大きいです。おとが とても おおきい です[o.to.ga to.te.mo oː.kiː desɯ]不快さを直接言わず、客観的に説明する
Note

IPA は近似です。母音の長さや「ん」の調音は話し手によって少し変わります。かなと合わせて確認してください。


実際の使い分け例(接客とビジネス|読み・IPA つき)

シーン言いたい意図適切な言い換えよみ(かな)発音(IPA)機能の説明
接客(お客様の作品を見て)感動・称賛素敵な作品ですね。丁寧に作られています。すてきな さくひん ですね。ていねいに つくられています。[sɯ̥.te.ki.na sa.kɯ̥.çĩn de.sɯ.ne teː.neː.ni tsɯ̥.kɯ̥.ɾa.ɾe.te.i.ma.sɯ]「すごい」より具体的で、相手の努力を示す
接客(混雑を説明)否定的状況の強調本日は非常に混み合っております。ほんじつは ひじょうに こみあっております。[hoɴ.dʑi.t͡sɯ̥.wa çi.dʑoː.ni ko.mi.aʔ.te o.ɾi.ma.sɯ]状況を客観的に説明し、謝意につなげやすい
社内(部下をほめる)能力を評価よく準備されていますね。安心しました。よく じゅんび されていますね。あんしん しました。[jo.kɯ dʑɯɴ.bi sa.ɾe.te.i.ma.sɯ.ne aɴ.ɕiɴ ɕi.ma.ɕi.ta]行動を具体的にほめて、次の行動を促す
社外(成果報告への反応)感謝・感心大きな成果ですね。助かりました。おおきな せいか ですね。たすかりました。[oː.ki.na seː.ka de.sɯ.ne ta.sɯ.ka.ɾi.maɕ.ta]成果の内容を示しつつ、感謝を明確にする
同僚間(日常会話)驚き・感心思ったより早く終わりましたね。驚きました!おもったより はやく おわりましたね。おどろきました![o.moʔ.ta.jo.ɾi ha.ja.kɯ o.wa.ɾi.maɕ.ta.ne o.do.ɾo.ki.maɕ.ta]感情をそのまま伝え、距離を近づける

文法的な観点

「すごい」は形容詞ですが、副詞的に「すごく〜」の形で使われることが多くなっています。
副詞化が進んだ結果、「すごい」を使えば多くの感情をまとめて表せる便利な言葉になりました。
ただし、文法的にも意味的にも抽象度が高いため、学習者にとって意味の特定が難しい語です。

そのため、言い換えの基本方針は:

「何が」「どのように」すごいのかを明示する。

文型のポイントは次のとおりです。

  • 評価を伝えるときは、対象+「が」+具体的な特徴をセットにする。例:仕事が早くて正確です。
  • 感情を伝えるときは、「本当に」「とても」などの副詞を前に置き、気持ちの方向を示す。
  • 意外性を伝えるときは、「思った以上に」「予想より」など、比べる基準を入れる。
  • 否定的な強さを言うときは、「とても大きい」「かなり時間がかかります」など、問題点を名詞で明確にする。

例:

  • × すごい人ですね。
  • 仕事が早くて正確な方ですね。(評価対象を具体化)

まとめ

  • 「すごい」は感情・評価・強調など、多機能な形容詞。使いすぎると伝わりにくい。
  • 曖昧さを避けるには、評価・感動・程度・意外性のどれを表したいかを決める。
  • 言い換えの基本は「具体化」。対象と特徴をセットで示すと誤解が減る。
  • ていねいに伝えたいときは、読みと IPA を声に出して練習し、場面に合う語を選ぶ。

おまけ

4コマ漫画「すごい」を言い換える会話

ほかの記事