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ことばを言い換えよう② 「できません」を相手を傷つけずに伝えるには?

Kotoba Drill スタッフ

今日のテーマ

「できません」という言葉は、ビジネスや接客の現場でよく使われます。意味としては正確ですが、 相手の依頼や提案を直接否定する形になるため、場合によっては冷たく聞こえることがあります。

今日は、「できません」をどう言い換えれば、同じ内容をより協調的で丁寧に伝えられるかを考えます。


今日のことば(読みとIPA)

  • ことば: できません(丁寧形)
  • よみ(かな): できません
  • よみ(IPA): [dekimasen]
  • いみ: 事情や規則、能力や条件のために「その行動を行えない」ことを伝える表現です。
Note

IPA は音の目安です。実際の会話では、話す速さ・周囲の音・話者のくせによって音の長さや強さが少し変わります。


なぜ「できません」が強く聞こえるのか

「できません」は次の3つの特徴を持っています。

要素内容
機能否定文(相手の要望を打ち消す)
主体話し手(自分)が中心に立つ
追加情報理由や代案が含まれない

このため、相手からは次のように受け取られることがあります。

  • 「拒否された」
  • 「助けてもらえなかった」
  • 「こちらの立場を理解してもらえない」

言い換えの目的は、「不可能」を伝えるのではなく、 どう対応できるか(条件・範囲・順番・時期など)を共有する形に変えることです。


言い換えの方向性(3つの軸)

「できません」は、次の3つの方向に変換すると、印象が大きく変わります。

言い換えの方向目的機能の変化
制約を説明するできない理由を明確に伝える否定 → 共有
代案を提示する代わりの方法・条件を提案する否定 → 提案
協力の姿勢を示す全面的な拒否ではないことを示す否定 → 協調

実際には、この3つを組み合わせると、さらに丁寧で伝わりやすくなります。 たとえば「理由」+「可能な条件」+「次の提案」という順番で述べると、相手は安心しやすくなります。


実際の使い分け例(接客とビジネス)

シーン言いたい意図適切な言い換え機能の説明読み(かな)読み(IPA)
接客(在庫がない)商品を提供できない申し訳ございませんが、こちらの商品は現在在庫がございません。理由を明確にし、否定を「共有」に変えるもうしわけございませんが、こちらのしょうひんはげんざいざいこがございません。[moːɕiwake gozaimasen ga, kotɕira no ɕoːhiɴ wa geɴdzai zaiko ga gozaimasen]
接客(特別対応の依頼)要望を断るが関係は保つあいにくそのサービスは行っておりませんが、明日17時までの受け取りでしたら可能です。不可+代案で「提案」に変えるあいにくそのサービスはいっておりませんが、あしたのじゅうななじまでのうけとりでしたらかのうです。[ainiku sono saːbisu wa itte orimasen ga, aɕita no d͡ʑɯː nana d͡ʑi made no ɯketori deɕtara kanoː des]
社内(時間が合わない)依頼を断る必要があるその時間は別件があるため、17時以降なら対応可能です。理由+可能な条件を提示するそのじかんはべっけんがあるため、じゅうななじいこうならたいおうかのうです。[sono d͡ʑikaɴ wa bekkeɴ ga aɾu tame, d͡ʑɯː nana d͡ʑi ikoː nara taioː kanoː des]
社外(納期が厳しい)要求を満たせないが関係を保ちたい現状では難しいですが、次回以降の検討に入れさせていただきます。直接否定を避け、今後の関係を維持げんじょうではむずかしいですが、じかいいこうのけんとうにいれさせていただきます。[geɴd͡ʑoː dewa muzɯkashiː des ga, d͡ʑikai ikoː no keɴtoː ni iɾe sase te itadakimasɯ]
メール(提案を断る)角を立てずに断る大変恐縮ですが、今回は見送らせていただきます。形式的で柔らかい印象にするたいへんきょうしゅくですが、こんかいはみおくらせていただきます。[taiheɴ kjoːɕɯkɯ des ga, koŋkai wa miokɯɾasete itadakimasɯ]
見積(予算オーバー)この条件では受けられないご提示の条件では難しいため、仕様を絞れば20万円で可能です。条件の調整案を添えて協議に進めるごていじのじょうけんではむずかしいため、しようをしぼればにじゅうまんえんでかのうです。[goteːd͡ʑi no d͡ʑoːkeɴ dewa muzɯkashiː tame, ɕijoː o ɕiboɾeba nid͡ʑɯː maɴ eɴ de kanoː des]
サポート(対象外)規約で対応できない規約上、個別の設定代行は承っておりません。手順はこちらをご参照ください。根拠+代替リソースを示すきやくじょう、こべつのせっていだいこうはうけたまわっておりません。てじゅんはこちらをごさんしょうください。[kijakɯd͡ʑoː, kobetsɯ no setːeː daikoː wa uketamawatːe orimasen. ted͡ʑɯɴ wa kochira o gosaɴɕoː kɯdasai]
制作(品質確保)急ぎ対応は品質に影響本日中は品質の保証が難しいため、明日の午前でしたら確実にご用意できます。リスク説明+安全な提案ほんじつちゅうはひんしつのほしょうがむずかしいため、あしたのごぜんでしたらかくじつにごよういできます。[hoɴd͡ʑit͡sɯ t͡ɕɯː wa hiɴɕit͡sɯ no hoɕoː ga muzɯkashiː tame, aɕita no gozeɴ deɕtara kakɯd͡ʑit͡sɯ ni gojoːi dekimasɯ]
Callout

「無理です」「できません」で止めずに、相手が次に動ける情報(条件・時期・手順・窓口)を一緒に伝えると、 対話が前に進みます。


使える言い換えテンプレート(そのまま使える例)

  • 理由+条件: 「◯◯のため、△時以降なら可能です。」
  • 理由+範囲: 「規約上、個別対応はいたしかねますが、設定方法のご案内は可能です。」
  • 予定の共有: 「現在、××の予定で進めております完了後にご連絡いたします。」
  • 優先順位: 「本件は安全確保を優先しているため、明朝の着手となります。」
  • 窓口の提示: 「担当部署が異なるため、こちらの窓口をご案内いたします。」
  • 代替の提案: 「本件は難しいため、近い目的を満たす方法として◯◯をご提案します。」
  • 段階的提案: 「まず小さく検証し、問題なければ本番適用に進めます。」

文法的な観点(やさしい説明)

  • 「できません」は、動詞「する」の可能形「できる」の否定「できない」の丁寧形です。
  • 可能の否定(できません)をそのまま使うと、相手の行動を止める印象が強くなります。
  • 言い換えでは、否定を避けて助動詞・構文の再選択を行います。
    • 例1: 「〜できません」→「〜はいたしかねます
    • 例2: 「〜できません」→「〜は難しい状況です
    • 例3: 「〜できません」→「現在、〜の予定で進めております
  • ポイントは、文法の置き換えではなく、文の目的(断る → 共有・提案・協力)を変えることです。

ミニ会話(練習)

  1. 受付での案内

A: 「この内容は、本日中の反映が難しい状況です。明日の午前でしたら対応可能です。」

B: 「わかりました。では、午前でお願いします。」

  1. 取引先との調整

A: 「ご提示のスケジュールでは品質の保証が難しいため、2日延長をご検討いただけますか。」

B: 「了解しました。社内で確認し、折り返します。」

  1. サポートの案内

A: 「個別の設定代行はいたしかねますが、手順のページをお送りします。不明点は一緒に確認しましょう。」

B: 「助かります。見ながら進めてみます。」


言い換え前のチェックリスト

  • 目的は明確ですか?(断ること自体ではなく、次の行動を作ること)
  • 理由は共有しましたか?(規則・安全・品質・順番・人員など)
  • 代案はありますか?(時期・範囲・条件・手順のいずれか)
  • 協力の姿勢は伝わっていますか?(可能な部分をはっきり言う)
  • 書き言葉/話し言葉は合っていますか?(メールなら形式的に、会話なら自然に)

まとめ

  • 「できません」は正しいが、否定の機能を持つため強く響きやすい。
  • 言い換えは「語を変える」のではなく、「文の目的」を変える作業。
  • 制約・代案・協力のいずれか(または組み合わせ)に変換すると、同じ意味でも柔らかく伝わる。
  • 接客でもビジネスでも、「断る」はゴールではなく、関係を保つ手段である。

次回:ことばを言い換えよう③
「すみません」の使い分けを考える

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