<- Back to blog

ことばで知る日本のくらし④ チップがない日本で“ありがとう”をどう伝える?

Kotoba Drill スタッフ

今日のテーマ

多くの国では、レストランやホテルでチップを渡すことが「感謝のしるし」とされています。 しかし、日本ではチップの習慣がありません。 それでも日本では、日常の中でいろいろな方法で“ありがとう”の気持ちを伝えます。

この記事では、「なぜチップがないのか」という理由と、 日本語で感謝を表すことばを、やさしい言い方で学びましょう。


今日のことば(よみかた+IPA)

次の表は、よく使う「ありがとう」の表現です。かんたんな場面から使ってみましょう。

日本語よみかた(かな)IPA意味・使い方
ありがとうございますありがとうございます[aɾiɡatoː ɡozaimasɯ]もっとも一般的で丁寧な感謝。今のこと、または少し前のことにも使う。
ありがとうございましたありがとうございました[aɾiɡatoː ɡozaimaɕita]過去の出来事に対する感謝。店を出るときなどに合う。
ごちそうさまでしたごちそうさまでした[ɡotɕisoːsame deɕita]食事のあとに言う感謝。家でも店でも使える。
お世話になりますおせわになります[osewa ninaɾimasɯ]これから助けてもらう前に言う。仕事や手続きでよく使う。
感謝申し上げますかんしゃもうしあげます[kaɴɕa moːɕiaɡemasɯ]とても丁寧でフォーマル。ビジネス文書やスピーチで使う。
Note

IPA は国際音声記号です。実際の会話では、母音の「う(ɯ)」が弱くなることがあります(例: 「です」→ [des] 近く)。ここでは学びやすさを大切にして、基本形で示しています。


文化メモ:日本では「気持ちをことばで渡す」

日本では、チップの代わりに「ことば」で感謝を伝えるのが普通です。 「ありがとうございます」や「ごちそうさまでした」ということばは、 お金ではなく、心でお返しをする文化のしるしです。

よくある考え方として、「お金を渡すと、相手を雇った関係のように感じる」ことがあります。 つまり、感謝は対等な関係の中で交わすもの。お金ではなく、ことばと態度で伝えるのが自然です。

Callout

実際には、ホテルや観光地で「少しの心づけ」を渡す場面がまったく無いわけではありません。ただし一般的ではありません。まずは「ことば」で伝えることを基本にしましょう。


文法ポイント:「〜てくれてありがとう」

感謝の対象(何をしてくれたか)をはっきり言うと、あたたかい表現になります。

基本形

〜てくれてありがとう

例文意味
手伝ってくれてありがとう。助けてくれてうれしい気持ちを伝える。
来てくれてありがとう。相手が来てくれたことに感謝する。
話してくれてありがとう。気持ちを共有してくれたことに感謝する。

英語の “Thank you for doing …” に近いですが、日本語では「相手の行為に対する共感」がより強く感じられます。

さらに丁寧にしたいときは「〜てくださってありがとうございます」を使います。

練習:言いかえよう(A2)

次の文を「〜てくれてありがとう」に言いかえましょう。

  • きのう、道を教えてくれました。→ 道を教えてくれてありがとう。
  • ドアを開けてくれました。→ ドアを開けてくれてありがとう。
  • メールを送ってくれました。→ メールを送ってくれてありがとう。
「〜てくれて」って?

「〜てくれて」は、相手が自分のために行動してくれたことを表します。うれしい気持ちが入っています。


場面で学ぶ「ありがとう」

チップのない日本でも、言い方と態度で感謝が伝わります。次の場面で使ってみましょう。

  • 店で:会計のあとに、軽く頭を下げて「ありがとうございました」。
  • 食事のあと:席を立つ前に「ごちそうさまでした」。
  • 手伝ってもらったとき:「助かりました。ありがとうございます」。
  • 道を教えてもらったとき:「ありがとうございます。助かりました」。
  • 仕事をお願いするとき:「お世話になります。どうぞよろしくお願いします」。
Note

おじぎや笑顔も大切です。声の大きさは、周りの人のじゃまにならないようにしましょう。


よくある質問(やさしい説明)

Q1. チップを渡すと、失礼ですか?

A. ほとんどの場合、心配いりませんが、相手が困ることがあります。まずは、ことばで感謝を伝えましょう。

Q2. もっと丁寧に言いたいです。

A. 「ありがとうございます」を「誠にありがとうございます」や「感謝申し上げます」にすると、とても丁寧です。フォーマルな場面で使います。

Q3. カジュアルに言いたいです。

A. 友だちには「ありがとう!」で大丈夫です。目を見て、はっきり言うと、気持ちがよく伝わります。


今日のまとめ

  • 日本ではチップの代わりに「ありがとう」のことばで感謝を伝える。
  • 感謝はお金ではなく、対等な気持ちのやり取りとして表される。
  • 「〜てくれてありがとう」で、感謝の対象を具体的に伝えられる。
  • おじぎや笑顔も、やさしい気持ちを伝える大切なサイン。

次回:「ことばで知る日本のくらし⑤」 電車で静かにするのはなぜ? ─ 思いやりをことばで学ぶ

ほかの記事