<- Back to blog

ことばで知る日本のくらし② お辞儀の種類と意味 ─ 軽く頭を下げるのはどんな時?

Kotoba Drill スタッフ

今日のテーマ

日本では、あいさつや感謝、謝るときに「お辞儀(おじぎ)」をします。 ただ頭を下げるだけではありません。場面によって、角度やことばが変わります。

この記事では、「お辞儀」という動作と日本語のことばをセットで学び、 日本人のていねいさを、やさしい日本語で分かりやすく説明します。


今日のことば

日本語よみかた意味・使い方
会釈(えしゃく [eɕakɯ])軽く頭を下げるあいさつ。すれ違うとき、目が合ったとき。
敬礼(けいれい [keːɾeː])丁寧に頭を下げるあいさつ。お客様対応、上司へのあいさつ。
最敬礼(さいけいれい [saikeːɾeː])深く長く頭を下げる、いちばん丁寧なお辞儀。謝罪や深い感謝。
失礼します(しつれい します [ɕitsɯɾeː ɕimasɯ])部屋に入る・出るときなど、相手に配慮を示すことば。
よろしくお願いします(よろしく おねがいします [joɾoɕikɯ oneɡai ɕimasɯ])協力や関係をお願いするときの定番表現。

例文:

  • 会釈:廊下ですれ違ったら、軽く会釈します。
  • 敬礼:お客様に商品を渡すとき、敬礼して「ありがとうございます」。
  • 最敬礼:ミスをしたら、最敬礼で「申し訳ございません」。
  • 失礼します:ドアをノックして、「失礼します」と言って入ります。
  • よろしくお願いします:新しい仕事の前に「本日もよろしくお願いします」。
Callout

ポイント:お辞儀は「動作」と「ことば」をいっしょに使います。どちらかだけでは不十分です。


文化メモ:お辞儀は「ことばの一部」

日本のお辞儀は、ことばとセットで完成するあいさつです。 たとえば「失礼します」と言いながら、軽く頭を下げます。 「ありがとうございます」と言いながら、丁寧に頭を下げます。

日本では、「ことばだけ」「態度だけ」は足りません。両方がそろって礼儀になります。 静かな動作の中にも、相手への敬意(けいい)が表れます。


お辞儀の3種類と使い方

種類角度よく使う場面よく使うことば
会釈約15°すれ違い、軽いあいさつ「こんにちは」「お疲れ様です」
敬礼約30°お客様対応、上司へのあいさつ「ありがとうございます」「よろしくお願いします」
最敬礼約45°謝罪、深い感謝、正式な場「申し訳ございません」「心より感謝申し上げます」

角度が深いほど、相手への敬意や気持ちの強さが増えます。 会釈は「軽いあいさつ」、最敬礼は「深い謝罪・感謝」の気持ちを表します。

基本のフォーム(立っているとき)

  1. 立ち方:背中をまっすぐにします。足はそろえます。
  2. 手の位置:男性は体の横、女性は体の前で軽く重ねることが多いです(会社のマナーではよく見ます)。
  3. 角度:会釈15°/敬礼30°/最敬礼45°を目安に、ゆっくり前に傾けます。
  4. 目:少し下を見ます。相手をにらまないようにします。
  5. タイミング:ことば → お辞儀 → ゆっくり戻る、の順にすると自然です。
Note

座っているときも考え方は同じです。背中を伸ばし、ことばと動作を合わせます。

よくある間違いとコツ

  • 早すぎる/首だけ:首だけでパッと下げると、そっけなく見えます。上半身から、ゆっくり。
  • 笑いながら最敬礼:深い謝罪や感謝では、表情も落ち着かせます。
  • 目線が泳ぐ:少し下を見ると、落ち着いて見えます。

文法ポイント:「〜いたします」と「〜申し上げます」

どちらも自分をへりくだる謙譲語(けんじょうご)で、相手を立てるときに使います。

「〜いたします」

  • 「します」の丁寧・控えめな言い方。
  • 自分の行動をていねいに言うとき。

例:

  • ご案内いたします。
  • 準備いたしました。
  • よろしくお願いいたします。

「〜申し上げます」

  • 気持ち(感謝・おわび)を強く伝えるとき。
  • 「言います」の謙譲語。

例:

  • 心より感謝申し上げます。
  • 深くおわび申し上げます。
  • 新年のごあいさつを申し上げます。
Callout

メモ:「申し上げます」は、最敬礼に合う強い敬語です。深く頭を下げる動作と合わせると、最大級の敬意になります。


文化と言葉のつながり(対応表)

行動対応することば背景
軽く頭を下げる「お疲れ様です」(おつかれさまです [otsɯkaɾe sama desɯ])相手をねぎらう、社会的な距離を保つ礼儀
丁寧に頭を下げる「ありがとうございます」(ありがとう ございます [aɾiɡatoː ɡozaimasɯ])感謝の気持ちを形で見せる
深く頭を下げる「申し訳ございません」(もうしわけ ございません [moːɕiwake ɡozaimasen])敬意と反省をはっきり示す文化
部屋に入る「失礼します」(しつれい します [ɕitsɯɾeː ɕimasɯ])相手の“内”に入る前のマナー
会話の終わり「よろしくお願いします」(よろしく おねがいします [joɾoɕikɯ oneɡai ɕimasɯ])関係の継続を願う気持ち
電話を切る前「失礼いたします」(しつれい いたします [ɕitsɯɾeː itaɕimasɯ])見えない相手にも丁寧さを保つ

場面別ミニ会話

1) 職場ですれ違う

A:おはようございます。(会釈) B:おはようございます。(会釈)

2) お店でのやりとり

店員:ありがとうございます。(敬礼) 客:お願いします。(軽く会釈)

3) ミスをして謝る

部下:このたびはご迷惑をおかけして、申し訳ございません。(最敬礼) 上司:今後は気をつけてください。

4) 部屋に入る・出る

来客:失礼します。(会釈して入る) 担当:よろしくお願いいたします。(敬礼)


練習:やってみましょう

  1. ことばと角度を合わせます。次のことばに、どの角度が合いますか? 会釈/敬礼/最敬礼
    a) ありがとうございます。 b) 申し訳ございません。 c) お疲れ様です。
  2. 音読します。「失礼します」「よろしくお願いします」を、声と動作を合わせて練習しましょう。
  3. ロールプレイ:店員とお客さん、上司と部下で、1分の会話を作ってみます。

今日のまとめ

  • お辞儀は、ことばといっしょに使って礼儀が完成します。
  • 会釈・敬礼・最敬礼の3種類で、気持ちの強さや距離感を表します。
  • 「〜いたします」「〜申し上げます」は、相手を立てる謙譲語です。
  • 動作と言葉の両方で、相手への思いやりを伝えるのが日本文化の特徴です。

次回:「ことばで知る日本のくらし③」
コンビニで学ぶ日本語の敬語 ─ 「温めますか?」にある思いやり

ほかの記事