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秋といろは歌をやさしく知ろう
2025/10/06

「日本語はむずかしい」とよく言われます。その「むずかしさ」の中には、日本人が大切にしてきた考え方が映っています。ことばは心を映す鏡。言い方の選び方や、短い沈黙にも、思いやりや敬意が表れます。
この連載では、日本語ということばを通して日本文化を見ていきます。第1回の本稿では、日常の場面で見える特徴を、やさしいことばと実例で紹介します。
日本語では、議論に「勝つ」ことよりも、関係を気持ちよく保つことを大切にする傾向があります。
調和を支える他の道具:
日本語は情報だけでなく、「関係の温度」もいっしょに運ぶことばです。
日本語には、やわらかく言うための表現(婉曲表現)が多くあります。「うーん、どうしよう」「今回は見送りで」「検討します」などが代表例です。目的は責任回避ではなく、相手と未来の関係を守ることにあります。
文化によっては「検討します」が、実質的な「No」と受け取られる場合があります。傷つけずに明確に断るなら、「ありがとうございます。今回は見送らせてください。次の機会にお願いします。」のように、感謝+断り+次の提案を。
| 表現タイプ | 目的 | 例 |
|---|---|---|
| クッション言葉 | 衝撃をやわらげ、礼儀を示す | 「恐れ入りますが…」「差し支えなければ…」 |
| 余地を残す返答 | 関係を保ち、対話を継続 | 「前向きに検討します」「社内で共有します」 |
| 代替提案 | No の代わりに道を示す | 「今回は難しいですが、来月なら…」 |
日本語では自然を人のように表すことがあります。「風が気持ちいい」「花が笑う」など。人は自然の一部という感覚です。
日常のことばに心をこめる。ここに日本文化の根が見えます。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| クッション言葉 | 衝撃をやわらげる前置き | 「恐れ入りますが…」「差し支えなければ…」 |
| 推量表現 | 断定を避け、余地を残す | 「〜かもしれません」「〜と思っております」 |
| 受容ファースト | 受け入れてから提案 | 「賛成です。その上で …」 |
| 敬語の切り替え | 距離・敬意の調整 | 「〜されますか/〜させていただきます」 |
| 終助詞 | トーンの共有 | 「ね/よ/かな」 |